右眼で過去を想像し、左眼で未来を創造する
御伽の杜
御伽の杜《おとぎのもり》が一夜限りの音楽会を奏でた。白猫のリンゴは、森に向かって駆けていた。深緑の音を聴きながら、道中を急ぐ。秘境にたどり着き、12匹の猫がそろった。いつかの釈迦の予言を胸に、猫たちは夜空に向かって荒れた世界を救うと誓った。
一方、神楽匠《かぐらたくみ》は、工房で自殺を図ろうとしていた。沖縄の伝統工芸職人として失敗し、全てを失った。死を受け入れた瞬間、リンゴと出会う。リンゴの青と黄色の異なる両眼に魅せられた匠は、もう一度だけ、琉球ガラスやトンボ玉の創作への挑戦を決意する。
作品『リンゴの瞳』が飛ぶように売れ、大手の宝石会社と契約。だが、匠は罠に掛けられ、白猫のリンゴを奪われてしまう。絶望に打ちひしがれる匠は、別れた恋人の晴夏《はるか》と再会する。リンゴを取り戻し、復縁を果たした匠と晴夏。幸せの絶頂に見えた二人を運命の悪戯が待ち受ける。